まず、3年目を迎えた「サガンビューティー&ヘルスケア グローバル アクセラレーター2022」について、このスタートアップ支援事業を「コスメティック構想」の中の取り組みの一つとして始められた経緯をお聞かせいただけますか?
佐賀県のコスメ産業クラスターの特徴と相性が良いのがアクセラレータープログラム。
高原主査
まず、スタートアップを支援する環境が佐賀県に揃っていることが挙げられます。佐賀県には、コスメ産業に関連する企業やサプライヤーがバランス良く存在しており、あらゆる支援が可能です。
また、産業クラスターというと、「大企業の企業城下町」のようなイメージが強いと思いますが、佐賀県のコスメ関連企業群は少し異なり、コスメ産業に必要なあらゆるプロセスの起業が独立して存在しています。これらの企業は県の事業にも熱心に協力いただいております。このような佐賀県の状況が、アクセラレータープログラムを実施する前提として整っている、ということが大きな理由です。
県民性も後押しし、佐賀県には新しいものを創造していく気運があります。
北村室長
加えて、佐賀の県民性という要素も大きいと思います。できない理由を探すのではなく、「なんとかできるようにしよう」という雰囲気があるので、この点はスタートアップに適しており、県としても支援する意義を感じます。
松本副室長
佐賀県は歴史も物語っているとおり、「新しいことをやってみよう!」というチャレンジャーが多いと思いますし、サポートする人もそれだけ多いということが魅力です。
そういったチャレンジャーの方々が思う存分に力を発揮する場をつくりたい、という想いで始まっていますが、これは長期的に県の発展にもつながっていくと思います。
清河主任主査
県の地域創生のことを考えると、「長期的に佐賀県のためになる」ことが重要だと考えています。新規事業となると、ハード面の整備という話にもなりがちですが、維持費などで負の遺産になってしまうことは本意ではありません。
佐賀県のコスメ産業をより発展させるために、他のメンバーが話している県民性も考えると、本年で3年目となる「アクセラレータープログラム」のようなソフト面の支援が非常に効果的だと考えています。
また、こういった支援には広い知見が必要だと考えるので、県内だけでなく、広く県外からも知見を集め、佐賀県内の企業にとって柔軟な支援ができればと考えています。
北村室長
本プログラムを通して、参加するスタートアップ様や支援いただける県内外の企業様と共に成長していけるような取り組みになればと考えています。
昨年までのアクセラレータープログラムで、印象に残ったことはありますか?
応募される方はスタートアップだけでなく、大企業の新規事業開発からも。
北村室長
スタートアップとして応募いただく企業様の中に、上場企業など規模の大きな会社さんが当初の想定以上にいらっしゃることに驚きました。
昨年応募いただいた「粧美堂」様のように、社長からの促進で新規事業部門から応募くださるなど、新規事業開発に積極的な会社様が増える中で、今年も個人から企業まで、様々な方から応募があればありがたいと考えています。
松本副室長
昨年の採択企業の方が実際に佐賀に足を運び、佐賀の可能性をその目で確かめ、大いに期待頂けたことが印象に残っています。「三栄興産」様や「ブルーム」様はじめ、県内外の企業が熱い想いでスタートアップの支援に動いてくださることが、コスメティック構想の広がりの支えになっていると思います。
柔軟・丁寧・小回りが効く支援ができたこと。
清河主任主査
私は「佐賀県工業技術センター」も、本プログラムを実施する上で大きな役割を担っていると思います。昨年の採択起業の「HAA」様が地域素材の活用を検討される中で、化粧品素材の機能性評価と有用性評価等についてサポートしてくれる当センターにとても関心を示されておりました。
各地に工業技術センターはありますが、コスメ系の機器があり、かつ、活用して頂けるところは少ないのが現状です。丁寧に支援できる環境があることは、大都市にはない佐賀ならではの魅力かなと考えています。
こういった事例も佐賀県でコスメビジネスを行うにあたっての魅力のひとつであると思いますし、それを魅力であると感じてくれる企業が多いことは、このプラグラムを始めてから、改めて認識しています。
野田主査
浜崎クラスターを始めとする県内企業は協力的で柔軟性もあり、他の都市だとロットの問題などで実現できないことも、寄り添って協力していただけることが多いです。
すべてが望み通りにならないとしても、「やってみます」というポジティブな反応をいただけることは、新規事業にとって重要なことだと考えています。
昨年の採択企業である「エリカ健康道場」様が、県産素材を使って商品化できたことは特に佐賀県らしい取り組みでした。
また、一昨年の採択企業である「バルドゥッチ」様のように、プログラム卒業後も継続的に商品化をすすめている事例もあります。プログラムから始まったつながりが継続してくれているのが嬉しいことですし、こういう形が積み重なって行けば良いなと思っています。
高原主査
前年の採択企業である「日本美容創生」様は、過去のプログラムにご参加頂いたことから、業界紙(美容系の新聞)でコスメティック構想について語って頂けるなど、徐々に輪も広がっています。こういう形で佐賀県の取り組みが広がっていくことも県でやる意義だと思います。
3年目となる2022年度のアクセラレータープログラムでは、特にどんな目標を持っていらっしゃいますか?
「コスメと言えば佐賀」という状況を目指して。
北村室長
「佐賀で成功した」といえる会社がたくさん出てほしい、というのは1年目からの変わらぬ思いです。成功とは、採択企業が思い描く商品が生み出され、それが流通し、かつ、市場やお客様に浸透している状態だと思っています。
将来的には、こういったプログラムが発展的解消をしていることが良いとも考えています。いわば、「コスメ産業のスタートアップの聖地」と認識され、わざわざプログラムを立ち上げなくても、佐賀に来たら自然とコスメビジネスが始められる、という状況を目指していく過程が長期的な目標だと考えています。
さらに言えば、コスメの作り手だけでなく、一般の消費者、県民のみなさん全国の方にも、コスメと言ったら佐賀、という認識になってもらえたら最高ですね。
野田主査
コスメ産業のサプライチェーンは複雑なところがありますが、生産一連のプロセスの至るところで、広く佐賀が関わっていてほしいと思います。
製造だけ、ある製品カテゴリだけ、のような、一部に限定されない取り組みになることで、新しいアイディアを刺激する部分も大いにあると思います。
採択企業の方々のネットワークから好循環を。
高原主査
参加してくださった採択企業が満足することがまず大切だと思います。参加してくださった企業の方々が胸を張って卒業生と言えるようなプログラムにしたいと強く思います。
参加してくださった方々が満足して、口コミでこのプログラムを伝えてくれるような状態になれば必然的に、ネットワークができ、好循環が生まれると思います。
北村が言うように、このプログラムから多くの企業に羽ばたいて頂いて、夢を持って頂けるようにしていきたいです。
清河主任主査
そのためにも、コスメにまつわる、様々な立場の人にお声掛けし、ご協力を仰ぎたいと考えています。大学の先生、起業家、専門家、様々な方のご協力を頂けるよう、現在準備を進めています。
今のところは単年度ごとの取り組みにはなっていますが、数年にわたる成長支援、新規事業支援の取り組みも行っていきたいと考えています。
本年度は特に過年度のスタートアップのフォローに力を入れているのですが、長期的な取り組みの一環としてこういったフォローも重視しています。
「佐賀県だからこそ、やりきることができた」という感想を。
松本副室長
単年度単位の事業ですから、先ずはアクセラレータープログラムの本質である、事業化が進むように支援していきたいですね。
もちろん、新しいプランである以上、失敗することも成功することもあると思いますが、スタートアップのみなさんが、これだけやりきった、佐賀県だからできたんだと思えるプログラムにしていきたいと思います。
この事業を通して、佐賀のことをもっと好きになってもらえることも県庁としては大切にしたいと思います。
野田主査
佐賀に来て、夢を叶えてほしい、ということが本年に限らず継続的な大きな目標です。一方で、プログラムを通じて、佐賀のことをどんどん好きになってほしい、という観点は、県庁として大切にしています。
本年度のスタートアップや新規事業の応募としては、どのような会社を期待されていますか?
地産素材を活かした原料から素材への一次加工。
松本副室長
佐賀県にはたくさんの農産物などがあるので、一次加工をうまく行って、それを広く素材として展開できる会社の応募に期待しています。
野田主査
原料開発については県外からも様々なご相談をいただくので、そういった会社が県内にできると、大きなビジネスチャンスにつながると思います。
未利用資源の活用についての問合せもかなりあります。農家と化粧品会社をつなげる会社、素材に展開・加工できる会社があれば、多くの会社に波及すると思うので、事業としても可能性があると考えています。
松永主事
そういう意味では、サンプルの製造だったり、研究としてだったり、そういうものづくりに特化した会社のご応募があっても面白いですね。
研究にフォーカスするなど、特徴のある企業を。
清河主任主査
研究所や研究施設、という観点は本当に面白いと思います。
佐賀大学の徳留先生と連携して商品ができるような会社が県内にこのプログラムを通して生まれたら良いな、という希望もあります。
たとえば、対象を研究に絞って、そこに注力するようなスタートアップが応募して頂けるのもありがたいと思います。そうすればこれまで以上に県産素材など活用しやすくなっていくと考えています。
高原主査
違う観点から言うと、SDGs的な観点をしっかり持っている会社も応募して頂きたいと考えています。県内企業だと清掃工場から排出される二酸化炭素を活用して化粧品原料となる藻類を培養し、循環型社会の形成を実現しているような会社さんもあり、これからはそういった観点の企業が成長していくと思います。
また、デジタル・テック系の企業が来てくれたら刺激になります。
県としても、拠点を選ばずに働けるテック系の企業の応募には期待しています。
プログラムを通して、世の中に良い話題を提供したい。
北村室長
まとめると、個人のスタートアップでも企業でも、技術力のある方々の応募は嬉しいですね。可能性が広がると思います。
また、「発信」という観点もあります。
学生さんがこのプログラムを通して起業されるなど、良い話題が提供できればとも思います。過去の参加者で言えば、「粧美堂」様のような、継続的に佐賀についてのことを発信してくれる会社もありがたいです。
冒頭にお話したように、大企業の中でも、新規事業などでの応募も増えています。そういった取り組みから、世の中におもしろい話題を提供できたら良いですね。
松本副室長
スタートアップのみなさんには佐賀での取り組みをSNSなども活用して大いに発信してくれることに期待しています。
一方で、新規事業を支援するものですから、佐賀でスタートしつつも、佐賀にとどまらない活躍をして頂きたいと思いますし、その支援をしていきたいと思います。
野田主査
このプログラムから佐賀を飛び出して活躍して頂いて、一方で、佐賀とつながり続けられるような会社が生まれたら最高ですね。
今年の支援で特に力を入れたいと考えていらっしゃることはありますか?
情報収集を欠かさず、適切なタイミングで適切なプロにつなぐ。
北村室長
応募してくださったスタートアップの皆さんを、適切にプロにつなげることですね。生産委託先などの県内のリソースに対してももちろんですが、プログラムを運営しているベルテクスさんやスワヌワールさんなど、広く必要な場面で必要な企業をお繋ぎしたいと考えています。
そのためには、情報収集も重要ですし、その情報を目利きできるようになるのが重要だと思っています。
高原主査
県には、情報があふれています。それを利害関係なく、つなげられるのが地方自治体としての強みだと考えています。想像もしないような業種間をつなげる取り組みをやっていきたいです。
どのようなご相談でも、実現できる方法を考えて実行していきたいと思います。そういった積み重ねで、オープンな県庁であると感じていただければ嬉しいです。
どんな相談にも寄り添って、困ったことを何でもサポートしたい。
松本副室長
プログラムが始まると、毎年色々なご相談があります。とにかく、困ったことを何でもサポートしていきたい。「よかったです」の一言がもらえている状況を続けて、来年以降の応募者へとつながるような状況にしていきたいと考えています。
清河主任主査
とことん企業に寄り添っていきたい、という思いです。
特に佐賀に進出したい企業には、土地を一緒に探したりもしますし、佐賀県に進出するメリット(助成制度など)についても積極的に提案していきたいと考えています。ご自身で探されるのはなかなか時間的にも難しい部分があると思いますので、本業に集中して頂けるようなサポートをしていきたいです。
また、県だけでなく市町村での行政的視点で積極的に情報提供していくことで、ビジネスにつながる支援をしていきたいとも思います。
野田主査
このコスメ構想室には、様々な業種、企業を経験したメンバーがいます。そういった経験をもとにネットワークを形成しているので、それぞれの経験を元に、「寄り添った」支援をしていきたいと考えています。
また、アクセラレータープログラムの内容をしっかりと発信していくことも、間接的に応募してくださったスタートアップの方々の支援になるとも思っています。
松永主事
今年入庁して、まだまだ学ぶことが多い身ですが、コスメ室だけでなく、必要なことを広く県庁全体で適切にお繋ぎできるようになりたいと考えています。
また、私は学ぶべきことが多いからこそ、応募してくださった方に近い感覚を持つことができる場合もあると思っています。
高原主査
松永に伝わるような言葉を使う、ということはコスメ室の共通認識です。というのも、どうしてもこういった内容は横文字が多くなるのですが、応募者、関係者の様々な方に内容を伝えていきたいという思いがあるからです。
チームメンバーそれぞれで活動を振り返りながら、効果的な支援をしたいと考えています。
県民の皆様の期待に答えるアクセラレータープログラムを。
北村室長
3年目を迎え、県民のみなさんが、期待してくれていることを実感しています。
今年もスタートアップの皆さんと共に、実りの多い取り組みにしていきたいと考えています。